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モノノベ第3
大阪ディープスポット四天王寺・新世界編

大阪・天王寺は、『聖と俗』が入り混じっているなんとも興味深い町だ。 私はいつもこの町の雰囲気に魅了される。 帰路に就く頃には、楽しくなっちゃって目の前のモノが二重になっている。 今日はその体験についてちょこっとお見せしよう。 カメラがピンボケしているのは、ご愛嬌でヨロシク。

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四天王寺p.m.2:00

都会のど真ん中に位置する寺院で、アクセスのし易さから人気の観光スポットだ。 四天王寺は、飛鳥時代に聖徳太子が建立したもので、ゆえに1400年以上も前のことである。 参拝客はいつも多く、子供からお年寄りまで幅広い年齢層が集っている。

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今日も線香と木の香りが私を包み込む。 最高にリラックスできる時間だ。 俗世間の騒音から離れて、みんな思い思いの時間を過ごしてる。 ここでは一秒が一分のように感じる魔力が宿っているようだ。 四天王寺のもう一つの見どころと言えば、亀だ。 その亀たちは、毎日変わらず池と石垣を行き来している。 その昔、知人が子供の頃にはなした亀もいるそうな‥。 その亀は今もなお、何十年間も甲羅を干し続けているに違いない。 なんとも凄まじい忍耐力! 私は自動販売機でアイスココアを購入。 ここのベンチでジュースを飲み、黄昏るのが私は好きだ。 十分に気も浄化されたので、次なる地へ向かう。

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新世界p.m.3:30

先ほどの四天王寺とは打って変わって、なんとも人間らしい生々しさが漂う町だ。 距離にして1キロメートル。 この近さで全く違う空間が存在している。 でもなんだかホッとする。 人々が顔を赤らめながら会話をする声、串カツを揚げる音‥。 私のアルコールボルテージは上がってきた。 すぐさま酒の自動販売機で、グリーンラベル500缶を購入。 グビッ。ゴクッ。「ぷはぁ〜。」 この瞬間を味わう為に酒を呑むようなものだ。 この町は、アルコールを体内にタンクしておかなければ先に進めない。 これで準備万端!酒気帯び取材のスタートだ。

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うすぐら〜い商店街に似つかわぬ真っ赤な提灯。 ポツポツと明かりが灯っている。営業している店もあるようだ。 私はビール缶片手に中に入る。 早速呑みに行こうとするご老人と遭遇。 「やってるか〜?」とご老人。 「17時からなんですよ〜。」とギャル店員。 ちょっとばかし早かったみたい。 ご老人は次なる酒場を目指し、暗闇に消えていった。 その跡を追っていると、いきなり大きなトラと目が合った! 私は急ブレーキを踏んだ! この商店街はトラを飼育しているのか? はたまた、天王寺動物園から逃げ出してきたのか。。 よくよく見ると、プライス¥7800。と書いてある。 トラ柄のチュニックだった。ホッと一安心。 もう酒がまわってきてるのか。今日は酔いが早い。 それにしてもザ・大阪と言わんばかりの柄モノ揃い。 トラ柄、ヒョウ柄etc...。 この令和の時代に、昔ながらの大阪を守り続けているこの店の店主に乾杯!!

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うす暗い商店街を抜けて、大阪の観光名所トップ3に入る通天閣の下をくぐり抜け、アルコールターボのおかげで私の足取りは軽い。 道なりに進んでいくと、白壁の昭和風な建物が見えてきた。 国際劇場と書いてある。 昔ながらの映画館かと思いきや、洋画のポスターの横に、堂々とおっぱいを放り出している女性のポスターも掲示されている。 なんとここでは、『ピンク映画』も上映しているのだ。 地上では洋画を、地下ではピンク映画を。 不思議なのは、この映画館からは性のエロさを感じない。 ひとつの芸術作品として出来上がっている。 私は生まれてこの方、こういった場所に赴いた事がない。 次から次へと、様々なジャンルの観客がこの屋敷に入っていく‥。

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その屋敷の前の駐車場で、ただ漠然と空を見上げ、佇んでいる男性二人の会話が耳に飛び込んできた。 「人生で一回は行っとかなあかんよなぁ。」 この男性はどのように感じ、どのような境地にいったのだろう。。 真相は分からないが、この劇場は彼に多大なるインスピレーションを与えたのであろう。 とても興味深い。 チケット売り場にこうある。 『ピンク映画3本立て 大人800円 老人・大学生600円』 65歳以上の方は敬老割引を受けられるのだそう。 私も人生に一度は行ってみたい。 敬老割引が使える65歳になってから、行ってみるとするか。

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国際劇場を超え、新世界の名所『じゃんじゃん横丁』へ向かう。 エキゾチックな出会いがあったので、酒がなくなってしまった。 近所の酒屋で、グリーンラベル500缶をリピート。 酒気帯びパーセンテージは深まっていく。。 どこかで串カツでも食べようかと思ったが、シャッターが閉まっているお店が目立つ。 そこは、かつてのじゃんじゃん横丁の光景とは大きく変わっていた。

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立ち呑み屋は休業し、外国人観光客向けであったお店は軒並み閉店、串カツ人気店がアルコールなしで営業、逆にこの機会を利用し串カツの新店舗をオープンさせ、アルコールありで営業している店。 コロナ禍でこの場所も少し様変わりしている。 だが以前のままの場所もある。 ゲームセンターに将棋クラブだ。 そこからは、タバコと缶コーヒーが混じり合った香りがこぼれ出てきている。 日曜日の夕方に、オジさん達が集い、ゲームセンターでテトリス、そして気の合う仲間と将棋を楽しんでいる。 なんて平和な光景なのだろう。 私はこの町の人々が、自由に好きな事を楽しみ、明るく、そして誰にも指図されていない雰囲気が好きだ。 このトンネルから先は、また新たな境地が広がっている。 が、今日はここまで。

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この天王寺という場所は、二つの世界が同時に存在し、共存している。 どちらの世界も面白いし、良いも悪いもない。 今日も様々な人たちと出会ったが、みんな明るく元気で笑顔に溢れていた。 『和を以て貴しとなす』 四天王寺と新世界は、聖徳太子が理想とした人類の在り方、そのものなのではないかと思う。 そんな事を思って歩いていると、缶ビールは空っぽ。 やっぱり帰路に就く頃は、モノが二重に見えていた。                             完。

文章・写真:ボタ餅

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